2012.09.05
WELCOME TO CHICAGO <1> ロキシー&ヴェルマの原点
ブログ新連載「WELCOME TO CHICAGO」、観る前でも観た後でも楽しめる、CHICAGOの歴史です!(全4回)
1回目は「ロキシー&ヴェルマの原点」です。
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WELCOME TO CHICAGO
レニー・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズ主演でアカデミー賞の総ナメにした映画版「CHICAGO」(2002年)が大ヒットを記録する前から、『CHICAGO』は舞台ファンを魅了して止まないブロードウェイ・ミュージカルの傑作として世界中を席巻している。1996年にリバイバル版としてNY のブロードウェイに登場した本作は、3年後の99年に最初の来日公演が実現。その後も2003年、05年、07年、09年、そして今回の12年と計6度に渡って海外のカンパニーによる来日公演が行われ、08年と10年には日本語上演が行なわれ、圧倒的人気を博した。
この舞台の原点の原点となる作品が産声を上げたのは、実は80年以上前のことだ。今日に至るまでの長きに渉る『CHICAGO』ヒストリーを、駆け足で追ってみたい。
ロキシー&ヴェルマの原点
ミュージカル『CHICAGO』は、ブロードウェイ・ミュージカル史上5本の指に数えられる天才演出家にして振付師、ボブ・フォッシーが遺した珠玉の舞台である。彼の公私にわたるパートナーであった名ダンサーのグウェン・ヴァードンが、キュートな女殺人犯がメディアの寵児となるコメディー映画「ロキシー・ハート」(42年)のミュージカル化を思い立ち、フォッシーが彼女のために舞台創作に着手。この「ロキシー・ハート」の原作となったのが、26年にブロードウェイで上演されたモーリーン・ダラス・ワトキンス作の喜劇『シカゴ』だ。
シカゴ・トリビューン紙の記者だったワトキンスは、24年春に全米を揺るがした二つの殺人事件とその裁判の経緯に触発されて『シカゴ』を執筆。ロキシー役のモデルは、愛人を射殺して正当防衛を主張したバツイチの人妻ベラ・アナン。ヴェルマ役のモデルは、不倫の相手を射殺するも酒に酔って記憶がないと主張したバツ3のキャバレー歌手ベルヴァ・ゲートナー。もちろん(!)両人とも無罪釈放となり、当時のマスコミはこの衝撃的な事件の顛末を大々的に書き立てたという。酒と男とジャズと堕落─アメリカの大衆文化が華開き、加速する〈Roaring 20's〉(喧噪の1920 年代)ならではの事件である。
(WELCOME TO CHICAGO <2> 「75年生まれ、2本のダンス・ミュージカル」に続く)

